【愛知県】名楽園「中村遊廓」(名古屋市中村区)
「新千寿」201403(現存せず)
現在の大須にあった「旭遊廓」を移転させる形で大正12年に開業したのが「中村遊廓」。
『全国遊郭案内』によれば昭和5年当時「貸座敷は139軒あって娼妓は1650人」「建造物も堂々たる大廈高楼と成り、一切の設備も完備して一大遊廓と成った」。
戦後も赤線「名楽園」として存続し、「焼けない青狼が88軒、843名」(全国女性街ガイド)という規模だった。
一帯の大部分は戦災を免れており、往時の妓楼が何軒か残っているが、近年は相次ぐ解体で数を減らしている。
写真は「新千寿」という屋号の妓楼で、「名古屋市都市景観重要建築物等指定物件」の指定を受けていたが、訪問年の秋に解体されており、現存していない。
アイコンに採用している画像は、その「新千寿」に飾られていた美人画である(写真下)。
【愛知県】名楽園「中村遊郭」(名古屋市中村区)201403 ※右上物件は現存せず
大部分が戦災から免れたことで多くの妓楼が現在まで現存し、中には大楼を中心に「名古屋市都市景観重要建築物等指定物件」の指定を受けているものも含まれている。
その多くは本来の目的としての役割を終え、蕎麦屋として再利用しているものや(写真左上「牛若」)高齢者施設に転身しているもの(写真左下「酒井」同右下「新金波」)もある。
戦前からの旧遊廓の姿をとどめている貴重な場所だけに、遊里跡としてのみならず非戦災地区として歩くのに見所が少なくないが、近年は冒頭の「新千寿」を筆頭に、写真右上の「稲本」のように「都市景観重要建築物」として指定を受けながら解体される例が目立ち、往時の名残が少なくなりつつある。
【愛知県】名楽園「中村遊廓・大門町」(名古屋市中村区)201304 ※現存せず
碁盤目状に区画されている名駅西にあって、中村遊廓は周囲とは異なる形態を示し、四隅から斜め方向に放射する街路が伸び、その内側に5つの街区(日吉・寿・大門・羽衣・賑)を持っている。
名駅から西に進んでいくと、遊廓の中心に当たる大門町に入るが、特殊浴場とともに古風な妓楼建築を目にすることができる。
医療法人の看板が掛かっているものの、空き家状態で現在まで至っていたが、近年に解体された。
後にググったら「美園」という屋号の妓楼だったという。
【愛知県】名楽園「中村遊廓・賑町」(名古屋市中村区) ※現存せず
中村遊廓で最も格式が高かったの大門町の北側(日吉・寿)で、大店の妓楼が多く残っていた。
一方の南側(羽衣・賑)になると小規模の妓楼や場末の歓楽街が残っている。
その中でも規模として大きかったのが、近年まで現存していた「新星」という屋号の旧妓楼で、訪問当時は住民と思われる車が停まっていて、大事に使われているのだなと思ったものだ。
【愛知県】名楽町「中村映劇」(名古屋市中村区)201403
中村遊廓から多少外れる名楽町に一軒の映画館が残っている。
屋根を見るとアールデコ風なモダンな装飾が施されているファサードで、戦前から建っていたものと思われる。
もともとは芝居小屋だったが、戦後に映画館に転業し、現在は成人映画館として好事家たちの間では知る人知る存在という。
遊廓に近い娯楽施設ということで、ある意味遊廓の名残りともいえる。
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